公開日:2022年7月27日

【東京・関東編】2022年夏休みに見たい!展覧会まとめ

ゲルハルト・リヒターやアレック・ソス、工藤麻紀子といった作家の個展から、現代社会を考えるテーマの企画展、デザインに関する展覧会も目白押し。夏休みに訪れたい全国の注目展覧会を紹介。

「市制90周年記念 工藤麻紀子展 花が咲いて存在に気が付くみたいな」会場風景 撮影:編集部

全国の夏休み期間に開催される注目展覧会をピックアップ。東京を中心に関東の展覧会を紹介する。気になる展覧会はTABアプリでブックマークも忘れずに!
*会期・内容は予告なく変更になる場合があるため、お出かけ前には公式ウェブサイトをご確認ください。

*北海道から沖縄まで、全国編はこちら

ゲルハルト・リヒター展(東京国立近代美術館)

今年もっとも話題の展覧会のひとつである、アート界のスター、ゲルハルト・リヒターの大規模個展が、東京国立近代美術館で開催中(10月15日〜2023年1月29日に豊田市美術館に巡回予定)。
国内では16年ぶりとなる今回の展覧会では、60年におよぶ画家の歩みを初期作から最近作までを揃えた約110点で概観。リヒター作品の代名詞とも言うべき「アブストラクト・ペインティング」シリーズや、アウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所がモチーフとなった《ビルケナウ》(2014)は本展の大きな見どころ。
TABでは展覧会のレポートや、担当キュレーターの対談志賀玲太によるレビューを掲載。本展の予習復習にどうぞ。

会場:東京国立近代美術館
会期:6月7日~10月2日
休館日:月曜日(祝日の場合、翌平日)
開館時間:10:00〜17:00(金・土曜日は20:00まで)
展覧会詳細

会場風景より、《ビルケナウ》(2014) © Gerhard Richter 2022(07062022) 撮影:編集部

ジャン・プルーヴェ展:椅子から建築まで(東京都現代美術館)

1990年代以降再評価が高まり、国内外で高い人気を誇るフランスの建築家、デザイナー、ジャン・プルーヴェの大規模な展覧会が開催中。アルミニウムやスチールといった新たな建築素材を探求するとともに、解体・持ち運び可能な椅子やプレファブ建築などの新技術を開発したプルーヴェの仕事は、デザイン、工芸、建築などひとつの分野に収まることなく、ジャン・ヌーヴェルやレンゾ・ピアノをはじめ、20世紀の建築・工業デザインの分野に大きな影響を与えた。本展は、現存するオリジナル家具およそ100点、ドローイング、資料の展示に加え、移送可能な建築物の展示を通じて、プルーヴェの仕事を網羅的に紹介する。

会場:東京都現代美術館
会期:7月16日~10月16日
休館日:月曜日(祝日の場合、翌平日)
*9月19日・10月10日は開館、9月20日・10月11日は休館
時間:10:00 〜 18:00
展覧会詳細
TABアプリで割引あり

会場風景より《F 8×8 BCC 組立式住宅》 © ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 C3924 撮影:編集部

地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング(森美術館/東京)

パンデミック以降の新しい時代をいかに生きるのか? 心身ともに健康である「ウェルビーイング」とは何か? こうしたことを、インスタレーション、彫刻、映像、写真、絵画などの現代アートに込められた多様な視点を通して考える。出品作家はエレン・アルトフェスト、青野文昭、モンティエン・ブンマー、ロベール・クートラス、堀尾昭子、堀尾貞治、飯山由貴、小泉明郎、オノ・ヨーコら16組。
本展のタイトル「地球がまわる音を聴く」は、オノのインストラクション・アートから引用したもの。展覧会レポートもぜひチェックを。

会場:森美術館
会期:6月29日~11月6日
休館日:会期中無休
時間:10:00 〜 22:00(火曜日は17:00まで)
展覧会詳細
TABアプリで割引あり

会場風景より、ヴォルフガング・ライプの展示風景

TOPコレクション メメント・モリと写真(東京都写真美術館)

「メメント・モリ」をテーマに、19世紀から現代までの写真表現を通して、人々が死(=見えない世界)をどのように見つめてきたかを探る。出品作家は、マリオ・ジャコメッリ、ロバート・キャパ、澤田教一、セバスチャン・サルガド、W. ユージン・スミス、リー・フリードランダ-、ロバート・フランク、牛腸茂雄、ウィリアム・エグルストン、ダイアン・アーバス、荒木経惟、ウジェーヌ・アジェ、東松照明ほか。国立西洋美術館所蔵のハンス・ホルバイン(子)《死の舞踏》も約20年ぶりに公開される。

会場:東京都写真美術館
会期:6月17日~9月25日
休館日:月曜日(祝日の場合、翌平日)
時間:10:00 〜 18:00
展覧会情報

フィン・ユールとデンマークの椅子(東京都美術館)

デザイン大国として知られるデンマーク。1940年代から60年代にかけて、歴史に残る優れた家具が生み出されたが、同国のなかでもフィン・ユールはひときわ美しい家具をデザインしたことで知られている。本展は、デンマークの家具デザインの歴史と変遷をたどり、その豊かな作例が誕生した背景を探るとともに、モダンでありながら身体に心地よくなじむユールのデザインの魅力に迫る試み。
優雅な曲線を持ち「彫刻のような椅子」とも評される椅子のデザインに始まり、理想の空間を具現した自邸の設計や、住居や店舗、オフィスのインテリアデザイン、そしてアイデアを伝えるために描いたみずみずしい水彩画まで、フィン・ユールの幅広い仕事を知る機会になるだろう。

会場:東京都美術館
会期:7月23日~10月9日
休館日:月曜日(祝日の場合、翌平日)
*9月20日(火)は休室。ただし、8月22日(月)、29日(月)、9月12日(月)、19日(月・祝)、26日(月)は開室
時間:9:30〜17:30(金曜日は20:00まで開館)
展覧会詳細
TABアプリで割引あり

会場風景 撮影:編集部

自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで(国立西洋美術館/東京)

国立西洋美術館のリニューアルオープンを記念する本展は、ドイツ・エッセンのフォルクヴァング美術館の協力を得て、自然と人の対話から生まれた近代の芸術の展開をたどるもの。開館から現在にいたるまでの両館のコレクションから、印象派とポスト印象派を軸にドイツ・ロマン主義から20世紀絵画までの100点を超える絵画や素描、版画、写真を通じ、近代における自然に対する感性と芸術表現の展開を展観する。
出品作家は、フィンセント・ファン・ゴッホ、エドゥアール・マネ、クロード・モネ、ゲルハルト・リヒター、ポール・ゴーガン、ポール・セザンヌ、ピート・モンドリアン、エドヴァルド・ムンクほか。
国立西洋美術館のリニューアルについては、こちらのレポートで紹介している。

会場:国立西洋美術館
会期:6月4日~9月11日
休館日:月曜日(祝日の場合、翌平日)
時間:9:30〜17:30(金曜日・土曜日は20:00まで)
事前予約制
展覧会情報

フィンセント・ファン・ゴッホ 刈り入れ(刈り入れをする人のいるサン=ポール病院裏の麦畑 1889 油彩・カンヴァス フォルクヴァング美術館蔵

鈴木大拙展 Life=Zen=Art(ワタリウム美術館/東京)

欧米圏に禅の思想を伝えたことで知られる仏教哲学者・鈴木大拙。ワタリウム美術館ではその活動を伝えるイベントがこれまでも開催されてきたが、現在、大拙と諸芸術の関わりを伝える展覧会が開催中だ。出品作家は木喰明満、岡倉天心、南方熊楠、西田幾多郎、柳宗悦、棟方志功、ジョン・ケージ、ヨーゼフ・ボイス、ナムジュン・パイク、谷口吉生、坂本龍一、山内祥太、大拙本人を含めた13組。本展協力は岡村美穂子(鈴木大拙館名誉館長、元日本民藝館評議員) 、テキストは安藤礼二(文芸評論家)。
展覧会レポートはこちら

会場:ワタリウム美術館
会期:7月12日~10月30日
休館日:月曜日(祝日の場合は開館)*9月19日・10月10日は開館
時間:11:00 〜 19:00(水曜日は21:00まで)
展覧会詳細
TABアプリで割引あり

会場風景より、左から、鈴木大拙 書《わたしゃしやわせ》(金沢ふるさと偉人館蔵)、棟方志功 書《不生》(1958、日本民藝館蔵)、鈴木大拙 書《山是山》(金沢ふるさと偉人館蔵) 撮影:白尾芽

「国立新美術館開館15周年記念 李禹煥」(国立新美術館、東京)

六本木の国立新美術館では開館15周年を記念し、「もの派」を代表する作家として国際的 にも大きな注目を集めてきた現代美術家、李禹煥(リ・ウファン)の大規模な回顧展が8月から行われる。静謐なリズムを奏でる精神性の高い絵画など、代表作が一堂に会するほか、新作も公開予定。李禹煥も登壇した記者会見のレポートはこちらから。
また同館では6月より「ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡―市民が創った珠玉のコレクション」が開催中(展覧会レポート)。そのほか、メモリアルイヤーにふさわしい様々な展示やイベントも。こちらの記事をチェック!

会場:国立新美術館
会期:8月10日〜11月7日
休館日:火曜日(祝日の場合は開館し翌日休館)
時間:10:00 〜 18:00(金曜日・土曜日は20:00まで)
展覧会詳細

李禹煥、フランス、アングレームでの《Relatum - The Shadow of the Stars》設置作業、2021 Photo ©︎ Lee Ufan

エカテリーナ・ムロムツェワ 「Breaking History」(アートフロントギャラリー/東京)

1990年ロシア・モスクワ生まれのビジュアル・アーティスト、エカテリーナ・ムロムツェワは、哲学と舞台美術のバックグラウンドを持つ。
本展では、ウクライナ侵攻を受けて制作された絵画シリーズ「Women in Black」を展示。本作は、ロシアの様々な場所で行われた、黒い服を着て白い花を手にした女性たちによるウクライナ侵攻に反対する抗議活動の波に捧げられたもの。また米国バージニア州リッチモンドにある南軍司令官ロバート・E・リー将軍の騎馬像を撤去する過程を描いた「Take Lee Down」シリーズも発表する。
エカテリーナ・ムロムツェワのこれまでの歩みとウクライナ侵攻後の創作について紹介する論考(文:鴻野わか菜)もあわせて読んでほしい。

会場:アートフロントギャラリー
会期:8月5日~8月28日
休館日:月曜日、火曜日
時間:12:00 〜 19:00(土曜日・日曜日・祝日は11:00〜17:00)
展覧会情報

エカテリーナ・ムロムツェワ Women in Black Against the War 2022

田口和奈 「A Quiet Sun」(メゾンエルメス/東京)

田口和奈(1979年東京都生まれ)は、オーストリア、ウィーンを拠点に制作・活動するアーティスト。これまで多重的な構造を持つモノクロームの作品を通じて、時間や空間といった形而上の存在を見出そうとする制作を続けてきた。今回は本展のために制作した作品群と、作家が収集するファウンドフォトを用いて編成された展示となる。ギャラリーにあふれる強い自然光をそのまま用いた、建築空間とのコラボレーションに注目だ。

会場:メゾンエルメス
会期:6月17日~9月30日
時間:11:00 〜 20:00(日曜日は19:00まで)
展覧会情報

会場風景 撮影:編集部
[Image: Kazuna Taguchi "A Quiet Sun" Image for exhibition leaflet (2022)]

「生活のデザイン ハンセン病療養所における自助具、義肢、補装具とその使い手たち」(国立ハンセン病資料館/東京)

東京・東村山市にある国立ハンセン病資料館で開催中の本展は、手足の不自由なハンセン病患者・回復者らが自身の暮らしのために作った様々な道具を紹介するもの。たとえば両下肢を切断した入居者によって考案・製作されたブリキの義足、スプーンやフォークといった食事のための道具などが並んでいる。展示物からは、かつて隔離政策によって様々な自由が制限されながら、そのなかで自らの生活を支える道具を作り、使ってきたハンセン病患者・回復者の苦悩の歴史とともに、障害とともに生きる人々が自らの可能性を追求してきた歩みについて知ることができるだろう。
本展のレポートでも、学芸員の言葉とともに詳しく紹介している。

会場:国立ハンセン病資料館
会期:3月12日~8月31日
休館日:月曜日(祝日の場合、翌平日)
時間:9:30 〜 16:30
展覧会情報

会場風景

工藤麻紀子展 花が咲いて存在に気が付くみたいな(平塚市美術館/神奈川県)

色面による構成と装飾的な表現により日常の生活を題材にした心象風景を描き続ける工藤麻紀子の、国内美術館における初個展が開催中。
視点を混在させた構図やコラージュのようにモチーフを配置し、マティスやボナールに通じる色彩と装飾性を兼ね備えた工藤の作品。国際的にも高く評価され、作品を見る人にとって、記憶にある風景や出来事を呼び覚ます、親密さとストーリー性も有している。本展は新作の絵画やインスタレーションを展示し、現在までの活動を紹介する。詳細や展示風景はこちらの記事をチェック。

会場:平塚市美術館
会期:7月9日~9月11日
休館日:月曜日(祝日の場合、翌平日)
時間:9:30〜17:00
展覧会詳細

工藤麻紀子 春から夏の思い出 2021 OKETA COLLECTION

アレック・ソス「Gathered Leaves」(神奈川県立美術館葉山館)

アメリカの現代写真を牽引するアレック・ソスの、日本の美術館での初個展が開催されている。ソスは1969年アメリカミネソタ州生まれ。同州ミネアポリスを拠点に緻密なプロジェクトとして旅を重ね、ドキュメンタリー・スタイルの伝統を継承しながらも独自の詩的な静謐さを湛えた作品を発表し、高い国際的評価を受けてきた。本展ではソスの作品を、初期から最新作までのアメリカを主題とする代表的な5つのシリーズで紹介する。
学芸員の解説とともに本展を紹介するレポートも公開中

会場:神奈川県立近代美術館 葉山
会期:6月25日~10月10日
休館日:月曜日(祝日の場合、開館)*9月19日、 10月10日は開館
時間:9:30〜17:00
展覧会詳細
TABアプリで割引あり

会場風景 撮影:編集部
アレック・ソス 2008_08zl0047 2008 「Broken Manual」シリーズより © Alec Soth, courtesy LOOCK Galerie, Berlin

開館20周年記念展「Flower of Life 生命の花」(ヴァンジ彫刻庭園美術館/静岡県)

開館20周年を記念する本展では、これまでヴァンジ彫刻庭園美術館で展示されてきた作品や本展のための新作を含む39作家による作品を紹介。なかでも、作家の個人的な経験や日々の営みから生まれた作品が中心に据えられ、世界に対する新しい視点を開くものとなっている。庭園の美しい自然とともに、芸術作品に満ち溢れた”生命”に想いを馳せたい。
出品作家は、イケムラレイコ、川内倫子、杉戸洋、須田悦弘、高見直宏、棚田康司、テリ・ワイフェンバック、戸谷成雄、長島有里枝、奈良美智、野口里佳、松江泰治、ほか。

会場:ヴァンジ彫刻庭園美術館
会期:4月23日~12月25日
休館日:水曜日(祝日の場合、翌平日)
時間:10:00 〜 18:00(9〜10月は17:00まで、11〜1月は16:30まで)
展覧会情報
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とある美術館の夏休み(千葉市美術館)

「夏休み」とは、大人にとっても子供にとっても「いつもとちょっと違う時間」あるいは「日常と非日常のあわい」と言えるのではないだろうか。本展は千葉市美術館のコレクションや美術館という場所そのものを、普段と異なる切り口で眺めてみる企画。様々な現代作家、表現者によるコレクション作品とのコラボレーションが展開される本展は、コレクションや美術館という場と新たな方法で出会える絶好に機会になるだろう。
参加アーティスト・クリエイターは、中﨑透、ミヤケマイ、清水裕貴、津田道子、目[mé]、小川信治、華雪、きぐう編集室、山野英之、井口直人×岩沢兄弟、Mitosaya薬草園蒸留所、井上尚子、文化屋雑貨店、new service(西舘朋央+Rondade)、Gottingham、ほか。

会場:千葉市美術館
会期:7月16日~9月4日
休館日: 毎月第1月曜日は休館(祝日の場合は開館)
*8月15日(月)は休室、7月25日・8月1日は休館
時間:10:00 〜 18:00(金曜日・土曜日は20:00まで)
展覧会情報
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蔦谷楽 「ワープドライブ」(原爆の図 丸木美術館/埼玉県)

ニューヨークを拠点に、核の歴史的悲劇をテーマに綿密なリサーチやアーカイブの研究を通して、制作活動を続けてきた蔦谷楽。日本での初個展となる本展では、第二次世界大戦時にアメリカで建設された日系人強制収容所のバラックと、戦後の広島・長崎に建てられたバラックという2つのモチーフを接合した構造物とともに、蔦谷の映像作品3点を見せるインスタレーションを展開。また核の歴史における重要なポイントを描いた平面作品を一堂に展示する。
《原爆の図》連作で知られる画家の丸木位里・丸木俊の常設展とともに鑑賞することで、核や原発、戦争の問題を過去ではなく現在の問題として考えることができるだろう。

会場:原爆の図 丸木美術館
会期:7月23日~10月2日
休館日:月曜日(祝日の場合、翌平日)*8月1日~8月15日は無休
時間:9:00〜17:00
展覧会情報

会場風景 撮影:編集部

福島夏子(編集部)

福島夏子(編集部)

「Tokyo Art Beat」編集。音楽誌や『美術手帖』編集部を経て、2021年10月より現職。