年末年始の冬休み期間に関西地方で開催されている注目展覧会をピックアップ。気になる展覧会はウェブまたはアプリからログインしてフォローしておくのがおすすめ。開幕と閉幕間近はメールでお知らせします。
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1990年代から国内外で発表を続けてきた杉戸洋。小さな家や船、果物、木々や雨粒といった身近なモチーフを、線や幾何学的図形とともにリズミカルに構成し、みずみずしい色彩で描いてきた。本展で着目するのは「余白」。それは絵画の裏側でキャンバスを囲む「えり」や「へり」として貼られた紙や木片、本の表紙をめくると現れる「あそび紙」、洋服の「裏地」など、すぐには気がつかない場所にあるもの。注目はグラフィックデザイナー・服部一成とのコラボレーション。杉戸の作品に触発されて服部がデザインした壁紙と、それにさらに影響を受けた杉戸の絵画が展示される。ニュースはこちら。
会場:弘前れんが倉庫美術館
会期:12⽉5⽇〜2026年5⽉17⽇
本展は日韓国交正常化から60年を迎える節目に、韓国の国立現代美術館との共同企画として開催される。地理的にも文化的にも近しい隣国でありながら、歴史的・政治的な複雑さも抱える両国の関係を、アートを通じて見つめ直す試みである。横浜美術館がリニューアルオープンで掲げる「多文化共生、多様性尊重」の理念を体現する展覧会となる。レポートはこちら。
会場:横浜美術館
会期:12月6日~2026年3月22日
若江漢字は、1970年代のドイツ滞在を機にヨーゼフ・ボイスの芸術に共鳴し、彼と交流するなかで、ボイス作品をはじめとする現代美術の収集と展示など、自らの創作活動と並行して芸術と社会を結ぶ行為を続けてきた。本展では初公開となる記録写真と並行してふたりの造形作品を展示し、両者の共通項と独自性を考察する。神奈川県立近代美術館 鎌倉別館で「川口起美雄 Thousands are Sailing」(11月1日〜2026年2月1日)も開催中。レポートはこちら。
会場:神奈川県立近代美術館 葉山
会期:11月15日〜2026年2月23日
ミューぽんで100円OFF!
春に象徴される「生命の再生」を軸に、自然や土地の記憶、内なる力をどう感じ直すかを問いかける展覧会。同館として初めて「箱根」という土地に焦点を当て、箱根町立郷土資料館所蔵の浮世絵や重要文化財を起点に、江戸から現代までの表現を横断的に紹介する。大巻伸嗣、杉本博司、小川待子らの新作に加え、モネ、ゴッホ、ルソーら西洋近代絵画コレクションも出品。約120点の作品が感性の奥に眠る"鼓動"を呼び起こす。ニュースはこちら。
会場:ポーラ美術館
会期:12月13日~2026年5月31日
ストリートカルチャーを切り口に「公共空間における表現の拡張」をテーマに活動するアートチーム、SIDE CORE。本展では、彼らが2024年度に同館のアーティスト・イン・レジデンスプログラムに参加し、金沢市内および能登半島でリサーチや作品制作を行った成果を展示する。2024年1月1日に発生した能登半島地震を契機に行われた能登半島でのリサーチは、震災がもたらした土地の変化への理解を深めることを目的としていた。展覧会では、「危機に対してアートは何ができるのか」という根源的な問いに挑戦し、SIDE COREの公共空間に対する独自の視点と、芸術がどのように社会に対して新たなバイパス(抜け道)としての可能性をもたらすのかを紹介する。レポートはこちら。
会場:金沢21世紀美術館
会期:10月18日〜2026年3月15日
小川原脩、神田日勝という、北海道にゆかりのあるふたりの画家に焦点を当てた展覧会。小川原は倶知安町の出身。戦前のシュルレアリスムへの傾倒、戦後に入っての北海道的な題材への取り組みや、縄文文化・シャーマニズムへの接近、そして動物をテーマにした作品を経て、晩年にはチベット・インドへと接近するなど、生涯にわたって様々な画風の変遷を辿っている。神田日勝もまた、戦後社会派リアリズムや、ポップアートを思わせる色彩の氾濫、そしてアンフォルメルなど、自らの画風を最後まで模索し続けた人物だ。本展は、戦後の激動の時代にあって、芸術を通じて自己の確立を目指した両者の歩みを総覧する。
会場:神田日勝記念美術館
会期:12月3日〜3月29日
北海道中南部・白老の内陸に位置する飛生の旧小学校を改造した「飛生アートコミュニティー」を拠点に活動する彫刻家、国松希根太の美術館初個展。国松は長い年月をかけて独自のフォルムを形成した木々と出会い、作品を制作してきた。近年は地平線や水平線、山脈、洞窟など風景のなかに存在する輪郭を題材に、彫刻や絵画、インスタレーションを発表している。本展では代表作に加え、奥入瀬のブナを用いた滞在制作など十和田の自然との出会いから生まれた新作を披露する。ニュースはこちら。
会場:十和田市現代美術館
会期:12月13日〜2026年5月10日
ミューぽんで100円OFF!
近代風景画家を代表する作家のひとりである吉田博は、こよなく自然を愛し、自然のなかにこそ美があり、自然とそれを直接見ることのできない人との間に立って、その美を表わすことを画家の使命と考えていた。本展では、刻一刻と変化する海をとらえた「瀬戸内海集」シリーズや、合計7年間を超える外遊から生まれた「米国シリーズ」「欧州シリーズ」など、木版画の代表作約70点を展観。また、吉田が描いた風景の現在の姿を撮影し、独創的な技術で表現された作品の魅力をオリジナル映像で比較展示する。
会場:MOA美術館
会期:12月20日〜2026年1月27日
幻想的な作風で知られるフランスの画家オディロン・ルドン。本展はルドンの画家・版画家としての顔と、美術批評家としての顔を同時に紹介するという、意欲的な構成となっている。第1部ではルドンの画業前半に制作された神秘的なモノトーンの石版画集の数々や、画業後半に一転して華やかな色彩と自由奔放な筆触で描きあげられた魅惑的な花の絵や神話画、風景画を対比的に展示。第2部ではアングル、ドラクロワ、クールベ、ピサロ、ドガ、ロダン、ボナールら、ルドンが著書『私自身に』の中で批評した芸術家たちの作品を、同館の所蔵品を中心に展示し、ルドンの言葉を引用しながら紹介する。
会場:ヤマザキマザック美術館
会期:10月24日〜2026年2月23日
印象派、なかでもクロード・モネが描く雪景色には水色や紫、ピンクなど多彩な色が使われているが、全体として「白い雪」という印象は損なわれない。有彩色や黒に比べて見過ごされがちな白だが、じつはモティーフとしても絵具としても、絵画に欠かせない重要な要素である。古今東西の芸術家たちは、当時使用できる画材と技法を駆使しながら、それぞれの感性で白を表現してきた。本展では、絵画における「白」の役割を様々な角度から紹介する。
会場:ひろしま美術館
会期:12月13日〜2026年3月22日
沖縄戦の終結から80年、そしてベトナム戦争終結から50年という、ふたの歴史的節目を迎えた2025年。本展は、植民地支配から戦争、統一、そして現代へと続くベトナムの歩みを、4つの章と特別展示を通して紹介する。出品作は、ベトナムにルーツを持つ、あるいは深く関わるアーティストの近代以降の作品や同館の所蔵品からベトナムに関連する選りすぐりの名品がラインアップ。沖縄とベトナムという、ふたつの場所と歴史が交差し、芸術を通じた平和への願いを次世代へと届けるような展覧会となった。
会場:沖縄県立博物館・美術館
会期:11月22日〜2026年1月18日
2022年末に逝去した建築家・磯崎新の没後、国内初となる大規模回顧展。磯崎は建築プロジェクトや都市計画にとどまらず、著作活動、芸術家とのコラボレーション、キュレトリアル・ワークまで、60年以上にわたって幅広い活動を展開した。「群島としての建築」と題した本展では、単一の領域にとどまらない磯崎の軌跡を「群島」のように構成。自身が設計した同館を舞台に、建築の枠を超えた磯崎の活動を俯瞰的に紹介する。
会場:水戸芸術館 現代美術ギャラリー
会期:11月1日〜2026年1月25日
フィンランドのモダンデザイン界で圧倒的な存在感を放つタピオ・ヴィルカは、ガラスや磁器、銀食器、宝飾品、照明、家具、グラフィック、空間まで幅広い作品を手がけた。日本初の回顧展となる本展では、エスポー近代美術館、タピオ・ヴィルカラ ルート・ブリュック財団、コレクション・カッコネンから厳選したプロダクトやオブジェ約300点に加え、写真やドローイング(複写)を展示し、デザイナー、彫刻家、造形作家としてのヴィルカラの魅力に迫る。東京ステーションギャラリーでも開催された本展のニュースはこちら。
会場:岐阜県現代陶芸美術館
会期:10月25日〜2026年1月12日
戦後の「リアリズム写真」ムーブメントを牽引した土門拳は、旧制中学校に通っていた17歳の頃、考古学に熱中していた。写真家として、古寺の仏像から現代の社会問題まで被写体を徹底的に研究し撮影していく姿勢には、少年期から一貫していた土門の並外れた探究心が表れていたと言える。本展では、彼の探究心の原点ともいえる原始・古代から現代に至るまで、土門が撮った多様な被写体を歴史の流れを辿る形に再構成し、作家が追い求めた「日本」の姿を探る。
会場:土門拳写真美術館
会期:10月31日〜2026年1月25日
2023年に開催された「テオ・ヤンセン展」に続くオランダとの文化交流として開催される展覧会。抽象的な構図、反射、影の使い方、独特のフレーミングを特徴とするストリートフォトで注目を集める、オランダの新進気鋭写真家サラ・ファン・ライとダヴィット・ファン・デル・レーウの作品を日本で初めて紹介する。あわせて千葉を拠点に活動する写真家・小説家の清水裕貴のアプローチを通して、千葉ゆかりの古写真コレクションや同館の絵画コレクションも展示。
会場:千葉県立美術館
会期:11月15日〜2026年1月18日
日本やオリエントとの邂逅をひとつの契機として西欧で発展したアール・ヌーヴォー、アール・デコ様式は、20世紀初頭に進取のモードとして貪欲に取り入れられ、大正ロマンや昭和モダンといった独自のモードを生み出した。本展は、現代デザインの礎と言える、大正から昭和にかけてのデザイン実践を紹介。アール・ヌーヴォー、アール・デコのエッセンスを日本固有の感性と融合させた工芸からファッションまで、時代を鮮やかに彩った"ロマンティック・モダン"の諸相を明らかにする。
会場:岐阜県美術館
会期:11月15日〜2026年2月15日
50年にわたり、熊本から独自のファッション文化を発信し続けてきた有田正博は、日本のファッションシーンにおける「セレクトショップ」の原型を作ったひとりとして知られている。インターネットも携帯電話もなかった1970年代、有田は東京と同時期、ときにはその先端をゆく海外のファッションを熊本に導入。磨きつづけた自らの「眼」と「手」だけを頼りに、まだ無名だったポール・スミスやマーガレット・ハウエルをいち早く見出した。本展は、有田のこれまでの仕事と営みを通じて、「つくる人」だけでなく「見出す人」の眼に宿る創造性を明らかにする。
会場:不知火美術館・図書館
会期:12月6日〜2026年1月28日