トマス・モアにより名づけられたユートピアとは「どこにもない場所」を意味する。ウィリアム・モリスの思想を起点に、20世紀日本では美術・工芸・建築を横断し、暮らしの理想をかたちにする試みが展開された。本展は、装飾や建築に宿る「美しさ」に焦点を当て、過去のユートピア思想を再考するとともに、今日の暮らしから未来を構想する視座を提示する。
会場:パナソニック汐留美術館
会期:1月15日〜3月22日
大西茂は、数学研究と制作を往還し、写真と絵画を横断した戦後日本美術の異才。本展は、日本初となる回顧展として、多重露光やソラリゼーションによる写真、アンフォルメルと響き合う巨大絵画、数学の遺稿までを紹介する。数理と思索に裏打ちされた激しい造形表現を通じ、その全貌と国際的意義を再検証する。
会場:東京ステーションギャラリー
会期:1月31日〜3月29日
浮世絵の風景画に描かれた名もなき「おじさん」たちに焦点を当てる展覧会。旅や仕事、食を楽しむ姿はたんなる脇役にとどまらず、見るほどに豊かな個性と愛嬌を感じさせる。本展では歌川広重をはじめとする絵師たちの作品150点以上を通して、細部に宿る表現の魅力と浮世絵の新たな読み方を提示する。
会場:太田記念美術館
期間:前期 1月6日~2月1日、後期 2月5日~3月1日
建築や映像の素養を背景に、アルフレド・ジャーは社会や世界情勢を主題とする制作を続けてきた。写真や映像、空間を用いた作品は、見る者に思考を促す体験をもたらす。本展では初期作から近作までを通して、その歩みと制作の核を紹介する。
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
期間:1月21日〜3月29日
麻布台ヒルズ ギャラリーでは、2026年1月16日から3月29日まで「劇場アニメ ルックバック展 ―押山清高 線の感情」を開催する。世界的ヒットを記録した『ルックバック』の監督・押山清高が主催として参加し、原作マンガがアニメーションへと昇華される過程を、制作資料とともに検証する展覧会。
会場:麻布台ヒルズ ギャラリー
会期:1月16日〜3月29日
スカンジナビア半島の中央に位置するスウェーデンで、19世紀末から20世紀初頭にかけて描かれた絵画を紹介する展覧会。1880年代にフランスで学んだ若い画家たちは、帰国後、自然や身近な人々を題材に、情緒豊かな表現を生み出した。本展ではスウェーデン国立美術館の協力のもと、北欧ならではの感性と絵画の魅力をたどる。
会場:東京都美術館
期間:1月27日〜4月12日
「ミッション[宇宙×芸術]」展から10年、国際量子科学技術年(2025年)にあわせ、宇宙や量子といったサイエンスとアートの関係を探る企画展を開催する。宇宙研究や量子領域に着想した作品群、国産量子コンピュータによるアートなどを通して、「見えない世界」や世界の成り立ちを体験的に考える。インスタレーションやXR展示、研究者と作り手の対話を交え、表現の広がりを感じられる構成となっている。
会場:東京都現代美術館
期間:1月31日〜5月6日
1980年代後半から2000年代初頭にかけての英国美術に焦点を当てる企画展。サッチャー政権下の緊張感ある社会を背景に、既存の枠組みに疑問を投げかける実験的な表現が次々と生まれた。当時「ヤング・ブリティッシュ・アーティスト(YBA)」と呼ばれた作家たちを含む約60名による約100点の作品を通して、1990年代英国美術の多様で挑戦的な動きをたどる。
会場:国立新美術館
期間:2月11日〜5月11日
自然光の移ろいをとらえる表現を追求したクロード・モネの画業を紹介する展覧会。ル・アーヴルからジヴェルニーに至る各地での制作を軸に、創作の変遷をたどる。同時代の絵画や写真、浮世絵、工芸との関係にも目を向け、制作の背景を浮かび上がらせる。オルセー美術館所蔵作を含む約140点により、風景画家としてのモネの魅力を紹介する。
会場:アーティゾン美術館
期間:2月7日〜5月24日
明治期の風景版画に新たな表現をもたらした小林清親の仕事を起点に、日本の風景版画の流れをたどる展覧会。黄昏や夜景の光を描いた「光線画」は、失われゆく江戸の情緒を陰影豊かにとらえた。清親から吉田博、川瀬巴水へと続く系譜を、スミソニアン国立アジア美術館所蔵の作品を中心に構成する。
会場:三菱一号館美術館
期間:2月19日〜5月24日
空山基による過去最大規模の回顧展を、東京・京橋のCREATIVE MUSEUM TOKYOで開催する。1970年代後半の初期ロボット作品から、AIBOの原画、音楽ジャケットで知られる代表作、近年の絵画・彫刻・映像インスタレーションまでを通して、半世紀にわたる制作の歩みをたどる。光・透明・反射という一貫した関心のもと、身体性やテクノロジー、未来像をめぐる空山の探究が、会場全体で体感できるだろう。
会場:CREATIVE MUSEUM TOKYO
期間:3月14日〜5月31日
下村観山の画業を関東圏で13年ぶりに振り返る大規模回顧展。橋本雅邦に学び、岡倉天心のもとで日本美術院の創設に関わった観山は、古画研究や海外経験を通して、日本画に新たな表現を切り拓いた。本展では《木の間の秋》《小倉山》《弱法師》などの代表作を軸に、その制作の歩みと近代日本美術における位置づけを改めて見つめ直す。
会場:東京国立近代美術館
期間:3月17日〜5月10日
18世紀後半の京都で活躍した長沢蘆雪は、奇想と確かな技量を併せ持つ画家として知られる。幻想的な風景や愛嬌ある動物、円山応挙に迫る写実から、型にはまらない奔放な表現まで、その作風は幅広い。禅や仏教思想とも深く関わった蘆雪の仕事を、東京で初めて多角的にとらえる機会となる。
会場:府中市美術館
期間:3月14日〜5月10日
W. ユージン・スミスは、第二次世界大戦下の取材や『ライフ』誌での活動を通じて、報道写真に深い物語性をもたらした写真家である。1950年代以降はニューヨークの「ロフト」を拠点に、音楽家や芸術家たちとの交流を写し取り、写真の表現領域を大きく広げた。本展では「ロフトの時代」を軸に、報道と芸術のあいだを往還したスミスの仕事を見つめる。
会場:東京都写真美術館
期間:3月17日〜6月7日
1976年の放送開始以来、2500回を超えて続いてきたNHK「日曜美術館」。放送50年を迎える節目に、番組とともに歩んできた“美”を振り返る展覧会を開催する。番組に登場してきた名作・名品約100点を軸に、出演者の言葉や高精細映像も交えながら、「日曜美術館」が紡いできた時間と美の広がりをたどる。
会場:東京藝術大学 大学美術館・陳列館
期間:3月28日〜6月21日
リトアニアを代表する芸術家ミカロユス・コンスタンティナス・チュルリョーニスの日本で34年ぶりに振り返る回顧展。国立M. K. チュルリョーニス美術館所蔵の主要作約80点を中心に、精神世界や宇宙への想像力に満ちた絵画とグラフィック作品が並ぶ。最大の代表作《レックス(王)》の日本初公開に加え、音楽と絵画を往還した独自の表現にも目を向け、その多面的な創作の広がりに触れる機会となる。
会場:国立西洋美術館
期間:3月28日〜6月14日
尾形光琳の弟子である渡辺始興や深江芦舟、弟の乾山、乾山に学んだと伝えられる立林何帠に目を向け、「光琳派」と呼ばれる系譜の作品を取り上げる。周縁に置かれがちだった表現を通して、琳派の広がりと奥行きを見つめ直す機会となる。あわせて、米クリーブランド美術館所蔵の《燕子花図》(渡辺始興筆)との並置にも注目したい。
会場:根津美術館
期間:4月11日〜5月11日
1924年にアンドレ・ブルトンによって定義されたシュルレアリスムは、フロイトの精神分析学に影響を受け、理性を超えた新たな現実を志向する創造の運動として広がった。その実践は美術にとどまらず、雑誌や広告、ファッション、室内デザインなど日常の領域にも及び、社会の感覚を変えていった。本展では国内所蔵の作品を通して、多層的に展開したシュルレアリスムの広がりを見つめる。
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
期間:4月16日〜6月24日
20世紀アメリカ具象絵画を代表するアンドリュー・ワイエスは、戦後美術の主流から距離を保ち、身近な人々や風景を描き続けた画家である。その絵画は写実にとどまらず、静かな情景の奥に作家自身の内面を映し出している。窓やドアといった「境界」のモティーフに注目し、私的な世界との関わりとして立ち現れるワイエスのまなざしをたどる。
会場:東京都美術館
期間:4月28日〜7月5日
国立新美術館では、生誕100年を迎える2026年春に、日本のファッションを牽引した森英恵の没後初となる回顧展を開催する。映画衣装からキャリアを築き、パリ・オートクチュール正会員として国際的に活躍した森は、戦後日本における新しい女性像を体現した存在でもあった。本展では約400点のドレスや資料を通して、創作と生き方が重なり合う森英恵の歩みをたどる。
会場:国立新美術館
期間:4月15日〜7月6日
アメリカを代表する絵本作家エリック・カール(1929〜2021)の歩みを振り返る回顧展。ページに穴を開ける独創的な造本で知られる『はらぺこあおむし』日本語版50周年を記念し、米国のエリック・カール絵本美術館とともに開催される。代表作27冊の原画をはじめ、ダミーブックやコラージュ素材、グラフィックデザイナー時代の仕事など約180点を通して、色彩豊かな表現と、子供たちへ向けられた温かなまなざしに触れる機会となる。
会場:東京都現代美術館
期間:4月25日〜7月26日
革新的な素材と技法によって具象彫刻の可能性を拡張してきたロン・ミュエクは、人間の身体と感情を極限まで見つめる作家として知られる。実在感に迫る造形と、実寸を大きく逸脱したスケールは、知覚や存在への感覚を静かに揺さぶる。本展では《マス》をはじめとする主要作を中心に、初期から近年までの作品を通して、孤独や不安、脆さといった人間の内面に向けられたミュエクのまなざしをたどる。日本では約15年ぶりとなる個展となる。
会場:森美術館
期間:4月29日〜9月23日
エットレ・ソットサスは、20世紀イタリアデザインを代表する存在として知られる。1950年代よりオリヴェッティやポルトロノーヴァで数々の仕事を手がけ、1981年には「メンフィス」を結成し、ポストモダンと呼ばれる潮流を決定づけた。合理性一辺倒の価値観に疑問を投げかけ、色彩やユーモアを通して生の感覚を取り戻そうとしたその歩みを、日本初の回顧展として、石橋財団所蔵の初期から晩年までの作品112点によってたどる。また、アーティゾン美術館では6月23日~10月4日まで「瀧口修造 書くことと描くこと」の開催も。
会場:アーティゾン美術館
期間:6月23日〜10月4日
パブロ・ピカソの作品と、英国人デザイナーのポール・スミスによる空間づくりが交差する展覧会。国立ピカソ美術館所蔵作をもとに、色使いや装飾、パターンに至るまで、ポール・スミスの自由な発想が会場全体に広がる。初期の《男の肖像》から《アルルカンに扮したパウロ》まで約80点を緩やかな時系列でたどり、アートとファッションが響き合うピカソ像を描き出す。
会場:国立新美術館
期間:6月10日〜9月21日
現代美術作家・杉本博司は、写真を起点に、建築や舞台芸術、書や陶芸、和歌、料理にまで活動を広げてきた。多彩な実践の根底にあるのが、1970年代から取り組んできた銀塩写真である。厳密な構想と高度な技術によって生み出されるその表現は、デジタル化が進んだ現在において、稀有な存在感を放つ。本展では初期から近年までの銀塩写真約65点を中心に、写真家としての杉本の歩みをたどる。あわせて、制作過程を記した「スギモトノート」など関連資料にも目を向ける。
会場:東京国立近代美術館
期間:6月16日〜9月13日
19世紀後半のパリでは、マネや後に印象派と呼ばれる芸術家たちがカフェに集い、新しい表現をめぐって議論を重ねていた。カフェやキャバレー、ダンスホールは、娯楽の場であると同時に、芸術が群衆と交差する場となっていく。やがてその気運はバルセロナにも広がり、若きピカソに大きな影響を与えた。本展では、マネ、ゴッホ、ロートレック、ピカソに加え、日本初公開となるカザスの《マドレーヌ》を含む約130点によって、“カフェ”を起点に広がった芸術の姿を描き出す。
会場:三菱一号館美術館
期間:6月13日〜9月23日
アルル国際写真フェスティバルを起点に世界を巡り、大きな反響を呼んだ展覧会が、内容を拡充して日本に上陸する。1950年代から現在まで、日本の写真史と美術史に重要な足跡を残してきた約30名の女性写真家に焦点を当て、これまで見過ごされがちだった表現の広がりを浮かび上がらせる。写真にとどまらず、インスタレーションや映像、印刷文化にも目を向け、約200点の作品と資料を通して、日本の写真表現が育んできた多様な視点と創造性をたどる。
会場:渋谷ヒカリエホール
期間:7月4日~8月26日
20世紀イギリス陶芸を代表するルーシー・リーの仕事を、交流のあった作家たちの作品とあわせて見る展覧会。井内コレクションを中心に、国内所蔵の作品が一堂に会する。ウィーンで学び、亡命後はロンドンを拠点に制作を続けたリーは、ろくろによる端正なフォルムや繊細な文様、釉薬の色彩によって独自の世界を築いた。本展ではヨーゼフ・ホフマン、バーナード・リーチ、ハンス・コパーらとの関わりにも目を向け、東洋のやきものとの接点を含めてその広がりをとらえる。
会場:東京都庭園美術館
期間:7月4日〜9月13日
世界有数のコレクションが集結し、レンブラントのエッチングに焦点を当てた大規模展覧会が国立西洋美術館で開催される。レンブラントの版画を体系的に所蔵する同館と、作家が実際に暮らした家を活用したレンブラント・ハウス美術館の協力により実現した企画である。両館の所蔵品に加え、国内外の美術館や個人蔵の作品・資料を交え、エッチングという表現を通して示されたレンブラントの革新性と、その後の時代へ及んだ影響を浮かび上がらせる。
会場:国立西洋美術館
期間:7月7日〜9月23日
美術家リチャード・タトルと建築家・青木淳による二人展。美術を“光”としてとらえ、瞬間に立ち現れる真実や美を分かち合おうとするタトルと、建築を“空気”になぞらえ、多様な価値観や時間の流れを受け入れる空間を志向する青木。本展では、領域を軽やかに越境する両者の感覚が交差し、美術と建築の両側から、会場空間の新たな在り方が立ち上がる。
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
期間:7月18日〜9月23日
東京都美術館は、開館100周年を記念し、大英博物館の日本美術コレクションに焦点を当てた特別展を開催する。約4万点におよぶ同館の所蔵品から、江戸時代の屏風や掛軸、絵巻、浮世絵版画などを中心に選りすぐりの名品が集う。注目されるのは、近年一連作であることが判明した襖絵の再集結。大英博物館、宮越家、シアトル美術館に分かれて伝わってきた作品が、約150年ぶりに同じ場で向かい合う。海外へ渡った江戸絵画の歩みと、その豊かな表現世界をあらためて見渡す機会となる。
会場:東京都美術館
期間:7月25日〜10月18日
彫刻を起点に、レリーフやシャンデリア、建築空間まで表現の幅を広げた多田美波の、東京では35年ぶりとなる個展。高度経済成長期に登場した工業素材や技術をいち早く取り込み、独自の造形へと結びつけた多田の仕事は、近年あらためて注目を集めている。本展では初期の絵画から、光の反射や透過を生かした彫刻、空間と呼応する造形作品までが並び、その多面的な実践が浮かび上がる。
会場:東京都現代美術館
期間:8月29日〜12月6日
大正・昭和期を代表する陶芸家・河井寬次郎(1890〜1966)は、「民藝」との出会いを通して「用の美」を意識した器を生み出した。本展では館蔵の寬次郎作品51点が並び、制作を支えた思想や造形の背景に触れることができる。
会場:静嘉堂文庫美術館
期間:9月5日〜11月8日
国立新美術館では、「ルーヴル美術館展 ルネサンス」を2026年9月より開催する。イタリアで生まれ、15〜16世紀にかけてヨーロッパ各地へ広がったルネサンス美術を、ルーヴル美術館所蔵の選りすぐりの約50点によって見渡す展覧会だ。古代ギリシャ・ローマを理想とし、人間の内面や主体性を表そうとした当時の芸術家たちの試みが、人物表現を中心に浮かび上がる。盛期ルネサンスを代表するレオナルド・ダ・ヴィンチの《女性の肖像(美しきフェロニエール)》の初来日も大きな見どころとなる。
会場:国立新美術館
期間:9月9日〜12月13日
フィンランドのデザインハウス、マリメッコの世界を体感する巡回展が、約10年ぶりに開催される。2026年7月の京都文化博物館を皮切りに、東京都庭園美術館をはじめ全国各地を巡回予定だ。1951年の創業以来、暮らしに喜びと前向きな感覚をもたらすことを理念に、独自のプリントデザインを生み出してきたマリメッコ。その数は3500種を超え、時代を越えて受け継がれてきた。本展では、創業者アルミ・ラティアの言葉を手がかりに、ドレスやファブリック、アートワークを通して、プリントに込められた思想とものづくりの広がりを感じられる内容となる。
会場:東京都庭園美術館
期間:10月3日〜12月20日
光と闇の対比が際立つ葛飾応為の名品《吉原格子先之図》を、4年ぶりに公開する。あわせて夜景を主題とする作品を数多く取り上げ、浮世絵のなかで夜の情景がいかに描かれてきたのかを浮かび上がらせる。闇に沈む街や灯りのきらめきに注目し、昼とは異なる表現の魅力に迫る。
会場:太田記念美術館
期間:前期 10月6日~11月3日、後期 11月7日~12月6日
過去145年にわたりシンシナティ美術館が築いてきたコレクションから、コロー、セザンヌ、モネらによる選りすぐりの84点が来日する。そのうち81点は日本初公開。20世紀半ば、地域社会に尽力した女性収集家たちの寄贈によって支えられてきた作品群が中心となる。本展では、近代美術を代表する画家たちの名作を通して、多彩な表現が交差する時代の息吹を感じることができる。
会場:上野の森美術館
期間:10月10日〜2027年1月10日
19世紀イギリスを代表する風景画家、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーの大規模展が、国立西洋美術館と大阪中之島美術館で開催される。自然の崇高さや光、大気の移ろいを独自の表現で描き、「光の画家」と称されてきたターナーは、印象派にも先行する革新性によって、現在も英国で高い人気を誇る存在だ。本展では、テート美術館所蔵の油彩40点以上、水彩・グアッシュ40点以上を中心に、風景画や歴史画、海景画など多彩な仕事が並ぶ。現代作家の作品も交えながら、ターナーの表現がいまなお響き続ける理由を浮かび上がらせる。
会場:国立西洋美術館
期間:10月24日~2027年2月21日
全国各地の夢二コレクションが集まり、竹久夢二の多彩な表現を見渡す展覧会が東京国立近代美術館で開催される。明治末から昭和初期にかけて、画家、詩人、デザイナーなど多方面で活動した夢二は、「夢二式」と呼ばれる女性像を通して大正ロマンを象徴する存在となった。本展では、約40年ぶりの公開となる代表作《黒船屋》をはじめ、日本画、油彩、スケッチ、デザイン、スクラップブックなど幅広い作品が一堂に会する。生活やメディアと密接に結びついた夢二の仕事から、時代をかたちづくった表現の広がりが立ち上がる。
会場:東京国立近代美術館
期間:10月23日〜2027年1月11日
石橋財団コレクションと現代アーティストの共演として毎年行われてきた「ジャム・セッション」。第7回となる今回は、社会や歴史への問いを作品化してきた藤井光を迎える。藤井が手がかりとするのは、プラトン『国家』に描かれた「洞窟の比喩」。真理としての「光」が何を照らすのかではなく、「誰がその光を放っているのか」という視点から、知や権力のあり方に切り込む。
会場:アーティゾン美術館
期間:10月24日〜2027年1月31日
萩尾望都、山岸凉子、大和和紀による三人展が、国立新美術館で開催される。1960年代後半にデビューした3人は、1970年代の「少女漫画黄金期」を牽引し、物語性や心理表現、画面構成に新たな地平を切り開いてきた。本展では、『ポーの一族』『アラベスク』『はいからさんが通る』などの代表作を軸に、原画や資料を通して、それぞれの創作の歩みと交差点が見えてくる。少女漫画が育んできた表現の豊かさを、あらためて実感できる機会となる。
会場:国立新美術館
期間:10月28日から2027年2月8日
美術、哲学、科学を横断し、未来への想像力をかたちにしてきた森万里子の、国内では24年ぶりとなる美術館個展。1990年代にポストヒューマン的表現で注目を集めて以降、森の関心はアニメ文化から自然信仰、仏教、さらには古代文明や最先端科学へと広がってきた。本展では、没入型インスタレーションをはじめ、彫刻、映像、写真など約80点が集い、30年以上にわたる実践が一望される。人類と自然、過去と未来を結ぶ思考の軌跡が、空間全体に立ち上がる。
会場:森美術館
期間:10月31日〜2027年3月28日